hako烤ushiの気まぐれ

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【ネタバレ有】『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』原作の改変について②

お待たせしました。

時間をかなり空けて、前回の記事ともども内容をブラッシュアップしました。

今回の記事は映画「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」の「原作との変更点について」です。

今回は、映画公開時期の原作イラストの溝口ケージ氏の発言などもまとめています。

 

前回の記事の続きとなっていますので、よろしければご覧ください。

 

前回の記事はこちら

hakoyakiushi.hatenablog.com

 

 

※この記事は映画の重要なネタバレを含みます。

予め、ご了承ください。

 

 

③指輪について/梓川翔子

これが、原作ファンの間でもっとも物議を醸した変更点だと思います。

なにせ、人ひとりの人生が変わっていますから。

作中では、麻衣が交通事故で亡くなったのち、失意にくれた咲太のもとに麻衣の心臓を移植された翔子さんが現れます。

そののち、峰ヶ原高校の保健室で咲太はアルコールを飲み、夢の中へ行くことになるのですが…

原作では、咲太は眠る直前に翔子さんの指にあるものを見つけます。

それが『指輪』でした。

【未来の話】では、咲太と麻衣の心臓を移植された翔子さんは学生結婚をしたのです。

最愛の人を失った咲太を慰めてたのは、翔子さんでしょうし、麻衣の性格を受け継いだ彼女が咲太と結婚をすることは至極納得のいく話です。

また学生結婚の伏線として、以前翔子さんは「自分の両親は学生結婚だった」と咲太に語っていたシーンがありました。

 

しかし、映画では、このエピソードは丸々なかったことにされていました。

 理由として、今回の映画では、あくまで咲太、麻衣、翔子の《3人の物語》という部分を強調する意図があるようです。もちろん、尺の問題もありますが。

 

ここで補足として、映画公開時期に原作のイラストを担当されている溝口ケージ氏のニコ生での発言を引用します。

 

溝口ケージ氏は

あのシーンをなくしたことによって、咲太と麻衣の純愛がより強調された。

アニメでこのシーンをやっていたら違和感を感じ得ない。

と考察されていました。

 

たしかに、ほかにも『豊浜のどかお当番回』であるTVシリーズの9,10話で、咲太と麻衣(中身は豊浜)と砂浜でキスをしませんでした。

原作だと、事故でキスをしてしまったことでパパラッチをくらい「桜島麻衣の初スキャンダル」が強調されたわけですが・・・

 

また今作でも【踏切の双葉のシーン】で、原作では、泣いている双葉を咲太が「国見じゃなくてごめん」と言って、胸に抱き寄せるシーンがありました。

映画では、カットされていて、電車が通り過ぎるシーンで終わっています。

ここは、原作を読んでて少し違和感を感じてしまったのでよかったです。

 

また、溝口氏は 

麻衣の場合でも、映画版で【未来から来た着ぐるみの咲太】を抱き寄せたりしなかったりと、『現在の咲太』と『未来の咲太』を同一視していなかった

とも考察していました。

これは、着ぐるみを着た咲太がテレビ局の控室で麻衣と再会するシーンのことですね。

 

他にも、咲太と翔子さんとのお別れのシーンで、手を繋ぐ以上のことをしなかったりと徹底して映画ではことごとく浮気の可能性を潰しています。

このように思いあたる節はいくつもあります。

 

今回の映画では、増井壮一監督、脚本の横谷昌宏をはじめ、スタッフの皆さんはどれほどキャラクターを大事にしているのかわかりますね。

非常にありがたいことです。

ちなみに、制作中麻衣が交通事故で亡くなった後、アニメーション制作の現場では暗鬱とした空気が流れていたそうです。

 

ここで、答え合わせとして「青ブタ打ち上げ」の話を溝口ケージさんが自身のニコ生で話してくださった内容を引用します。

増井壮一監督は「梓川翔子(指輪)のシーン」について

映画は1時間30分に収めなければならず、観客がギリギリ理解でき、純愛物語にしたかったのでカットした

とのことでした。TV版からの視聴者への配慮だったと当たっていたようです。

溝口ケージさん、さすがです。

ちなみに、楽屋の麻衣先輩が時系列の違う咲太を抱きしめなかったのは、ただただ尺の違いだったそうです。

深読みのし過ぎでしたが、こういった原作との比較という部分もヲタク的には醍醐味ですね。

 媒体の違い

「指輪」の件は媒体の違いによって削られた要素でした。

原作で読む分では感動したりするけれど、いざアニメにおこすと、アニメ組の人には違和感が残ったり、人を選んでしまうことがあります。

TVシリーズでも、原作にあるさくら荘の面々が出ているシーンがほぼカットされています。おそらく原作未読のアニメ視聴者への配慮だと思われます。

 

他にも例を上げると、原作1巻の「梓川かえでの紹介シーン」です。

原作では、咲太の背中に口をつけて、その振動で咲太が言葉を読み取り、麻衣にそれを伝えるという…なかなかなシーンでした(笑)

アニメでは、小声での自己紹介になっていましたけれど、普通に絵としてわかりやすいですよね。

 

ちなみに、咲太が上里の新たな一面を知ったり、国見を避けたりするシーンは尺の都合らしいです。

 

アニメ勢の方へ

このように映画だと、観客に集中してもらうための「上映時間の制約」や観客に分かりやすくするための「要素の削減」が顕著に現れます。

(この二点において、完全に逆行しているアニメ作品があるのですが。

庵〇監督の「シン・エ〇ァ」とかですね。ちゃんと観に行きましたし、ちゃんと面白かったです。)

それにもかかわらず、「よくぞここまで完成度の作品を作ってくれた」とスタッフの方々に対して感謝の気持ちでいっぱいです。

 

ここでは取り上げられきれなかった細かな違いやニュアンスの違いなどがありますから、是非、映画だけしか見てないという方は原作を読んでみてください。

非常におすすめの作品です。